
あっという間に師走です。
世間様はどこもかしこもクリスマスモード。
一方で相変わらず安定しない雇用情勢。
山奥の小寺の坊主に何ができるかというと、社会に貢献できることなど何もありません。
ただ、暇な時間を埋めるためにこのような駄文を書いているのです。
11月は紅葉ライトアップで、およそ1万人弱(把握数のみ)の方にお越しいただきました。
すでにその余韻もなくなり、寺の境内は冬景色に様変わりしています。
なのにまだ、その余韻にひたっているのでしょうか、今回は、この温泉寺茶話にあの「種田山頭火」さんが再登場致します。
秋の夜や 犬からもらったり 猫に与えたり (種田山頭火)
天真爛漫な性格、自由奔放、などと表現すると誤解を生じる場合がありますが、とにかく一生、母親の位牌を胸に抱いて懸命に生き抜いた俳僧であります。この句は晩年に詠まれた作で、ある秋の夜に、どこからともなくやってきた犬が大きい餅をくわえていて、ついついその犬から餅をご馳走になりました。その犬にお礼を言いつつ、どこからともなくやってきた猫に余っている分をご馳走した、ということだそうです。
そのままの解説になってしまいましたが、面白い情景だと思います。
現代の社会では、普通、野良犬がくわえているようなお餅を、素直に喜べません。不衛生という概念があるからです。だから、ご馳走にもならないし、ましてお礼を野良犬に言うこともありません。
山頭火には、清潔とか不衛生とか、上下関係、利害関係などという単語は存在しなかったようです。自分自身の存在と、他の存在とが常に平等でした。ですから相手が犬や猫であろうとも、自由自在、不二の世界だったのです。
そこに、お餅という存在が現れます。きれい汚いにこだわらず、山頭火にとっては尊い食べ物・つまり命なんです。尊い清浄なるものと思えるから、犬から素直に受け取り、自分だけではもったいないと、猫にお布施することができるのです。
この「犬→餅→山頭火」の関係と、「山頭火→餅→猫」の関係を、「三輪清浄」といいます。
お布施する者、される者、そしてその間に行き交う物体が、決して対立関係になく、不二の世界であることをいいます。更に注目していただきたいのが、「俺があいつにこうしてやった、ああいう具合にしてやった・・・」というわだかまりが一切ない世界なんです。
みんなが「ありがとう。」と言える世界が「三輪清浄」なのです。
11月の紅葉ライトアップは、下呂温泉の全ての方たちのホスピタリティーが凝縮された催しでした。宣伝に力を入れて下さった行政や観光協会様、足湯の提供を快く承諾して下さった各主要の組合様、ポスターやのぼり旗の掲示・案内をして下さった地元の皆様、実際に企画運営、開催中の警備にあたって下さった実行委員会の皆様など。それら全ての方たちのご奉仕のおかげで、お客様にモミジや楓の紅葉を無料で楽しんでいただけるのです。
みんなの奉仕で成り立つ催しは、そう多くは無いと思います。
無報酬なのに、みんなが喜んで奉仕して下さいます。無報酬なのに、行事自体確実に内容が充実してきています。細かな点まで配慮できるようになりました。道しるべの「手作り行灯」も年々増えてきています。何よりモミジの木自体も、ご寄付により年々増えております。
何故ここまでできるんだろう?と、責任者の一人の私が思ってしまいますが、下呂温泉の皆様が、モミジや楓を通じて「三輪清浄」の世界でお客様をお迎えしているからではないでしょうか。
「うわー!きれい~!!」 「ありがとう!」というお客様の声。それがなんだかすごく嬉しいんです。それだけで充分なんです。
お世話下さった皆様、ご来場いただきましたお客様、温泉寺の本尊様、モミジ様。
みんなに感謝申し上げます。
また、ご遠方より演奏に駆けつけて下さった、筝曲の山路みほ様、尺八の金子朋沐枝様、みんなの心を和ませて下さいました。ありがとうございました。
早いもので今年も残りあと僅かとなりました。11月は、紅葉のライトアップで境内は大賑わいでした。終了後、後片付けを経て、お正月に向けた準備をしていましたら、ついついお礼が遅くなってしまいました。本当に多くの皆様の温かいご支援・ご奉仕のおかげで今年のライトアップも大盛況のうちに終わりました。衷心より感謝申し上げます。
特に宣伝にお力添えをいただきました、下呂市観光客特別誘致対策協議会の皆様。
足湯の設置においては、下呂温泉旅館組合様、事業組合様。
毎年、ライトアップに快く賛同・ご協力賜っております、地元旅館の皆様。
趣旨にご理解賜り、温かく見守って下さる地元商店街の皆様。
行事に花を添えていただいた地元の「押し花アトリエ花遊び」の皆様。「四季の会」の皆様。
行事を盛り上げて下さった「飛騨獅子太鼓」の皆様。地元尺八奏者、クラリネット奏者の皆様。
遠くからはるばる駆けつけて下さった筝曲の山路みほ様、尺八の金子朋沐枝様。
僧侶のバイオリン説法で話題をよんだ山本正憲様。
抹茶席や、まかない等でお世話になった近所のおばさん達。
寒い中、準備や掃除、交通整理や道案内など、全て奉仕で労力と時間を提供して下さった地元の有志ボランティアの皆様。(実行委員会の皆様)
今年も美しく紅葉してくれた150本のモミジやカエデの皆様・・・
このロケーションを築きあげた歴代住職の皆様、地元の方のご先祖様達。
本当に大きな力で支えられている行事です。このライトアップだけでなく、現在の温泉寺の存在自体が、大いなるものによって支えられていると、しみじみ感じます。
個人的には、人様に公言しづらい、情けないことも多々ありましたが、その都度、周りの皆様に助けてもらって、息永らえています。
今、生かされていることを感謝して、また来年も頑張りたいと思います。
尾崎放哉の句より・・・
「ひょいと呑んだ茶碗の茶が冷たかった。
ひょいとさげた土瓶がかるかった・・・
冷え切った番茶の出がらしで話そう!」
種田山頭火の句より
「道は前にある。まっすぐに行こう!」
(写真・平成20年11月22日・山路みほさんと金子朋沐枝さん)
平成20年の紅葉ライトアップに登場した「特設もみじ足湯」は、こんな感じです。
(写真提供・実行委員会記録班・一色氏)
肝心のコンサートや紅葉の写真は、前回、前々回の茶話にのせています。
ご協力、有難うございました。
臨済宗妙心寺派・醫王霊山温泉寺
下呂温泉と共に歩んできたお寺の歴史について
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