
11月に入ってから、朝晩の冷え込みがきつくなってまいりました。毎朝の鐘つきやお勤めが、だんだん億劫になってきます。どこが一番寒いかというと、坊主の私にしたら頭が一番寒いんです。今朝も「嫌だなぁ~」と思いつつ鐘をついていたら、向こうに見える境内のモミジが少し色づいているのに気づきました。「紅葉の季節だなぁ」と、妙にしみじみとしてしまいました。
考えてみると、モミジの一年もたいへんなものです。春、若葉が芽をだしてから、きれいな青に生い茂る頃、入梅が重なり必ず雨が降ります。夏は猛暑がしばらく続き、その後は台風がやってきます。大雨、大風、猛暑と、モミジにとって良い日ばかりではありません。苦労を一年続けてようやくあの素晴しい紅葉を染め出だすのですね。苦労を避けるのではなく、モミジはいつでもじっと我慢をしています。
お釈迦様の教えの中に「大円鏡智(だいえんきょうち)」という智慧がございます。読んで字の如く、大きな円い鏡の智慧ということです。鏡は自分に映し出すものを、決して好き嫌いしませんよね。子供も大人もお年寄りも、男でも女でもありのままを映し出します。きれいな花も、汚いゴミも、差別なく映します。たとえ好きなものが目の前に来ても、わざとより一層きれいに映すことをせず、また目の前を去っても追いかけることをしません。嫌いなものが来ても、わざと余計に醜く映すことをせず、また自分から排除もしません。鏡は何でも素直にありのままを受け入れます。これがまた大きな円い鏡ですから、自分の許容範囲はものすごく広がるわけです。我々人間もこうでなくてはならないと、お釈迦様は示しておられるのです。
頭ではよく理解できる教えですが、実行しようと思うと、これがなかなか難しいんです。食べ物の好き嫌いはあるし、人間関係にも好き嫌いがどうしてもあるんです。でもこれを表に出すか出さないかで、世の中は随分変わります。モミジは愚痴一つこぼさずに立っているから、余計に紅葉が美しく、見るものの心をきれいにしてくれるのではないでしょうか。

臨済宗妙心寺派・醫王霊山温泉寺
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